お疲れさまです。今日のテーマは、”てんかん重積発作の治療”です。
さて、痙攣が止まらない患者さんが搬送されてきた場合、どのような処置をすれば良いでしょうか?
てんかんフローチャート(簡易版)
基本的には、下記の図の流れになります。それぞれ薬名の枠をクリックして、投与量などの諸注意を確認して下さい。
また、ノーベルバール(静注用フェノバルビタール)は、①②③のどのクスリとも代用可能とされています。 詳しくは日本神経学会のガイドライン(外部リンク PDF)を参照してください。
他に重要なこととして下記についてもそれぞれ確認しておきましょう。
気道確保
気道確保の際に筋弛緩薬を使用すると、痙攣の再発を見逃すことがあるため、筋弛緩薬を使用せず挿管する、あるいは筋弛緩薬にエスラックスを用いブリディオンですぐ拮抗するなど、対策を講じます。
ビタミンB1とブドウ糖の投与
てんかん発作の鑑別診断に、栄養障害性急性脳症(ビタミンB1欠乏)と低血糖発作があります。前者はビタミンB1製剤(アリナミン/メタボリンなど)を1A投与します。後者は血糖値を測定したうえで必要あればブドウ糖を投与します。
輸液路が確保できない場合
- ホリゾン1Aを注腸する。 ホリゾンの注腸はたいてい10分以内に効果を表します。呼吸抑制の合併症も少ないため静注より安全です。ホリゾンの筋注は勧められていません。
- 小児の場合、原液ドルミカムを鼻腔投与する。 ドルミカムの原液0.3mg/kg(0.03ml/kg)を細いシリンジで吸い、鼻腔に吹き込みます。この際、霧状化デバイスがあればさらに吹き込みやすいです。
鑑別診断
成人の場合でも、痙攣の前に先行感染徴候、発熱、意識障害、性格変化などがあった場合は、てんかんの原因として髄膜炎や脳炎を忘れてはいけません、治療のタイミングが遅れると、後遺症が残る可能性も高まります。
例えば、てんかんの既往歴のある患者さんや精神疾患患者さんが、てんかん発作の“再発”で搬送されてきた時などに、『いつもの発作でしょ』とタカをくくり、中枢神経感染症を疑わず、抗てんかん薬のみで対応してしまうと、てんかんが止まりにくいだけでなく、後遺症を残してしまいます。このため、疑わしきはルンバールを実施して、髄液の性状を確認しておきましょう。
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また、小児の痙攣重責対応についても、
- 小児版:てんかん重積状態の治療フローチャート
- 痙攣頓挫後の検査オーダー(後日更新します)
を参考にしてください。