表1 2008年以前のペニシリン感受性による肺炎球菌の分類
抗菌薬 | 適応 | 高感受性(S) | 中等度耐性(I) | 高度耐性(R) |
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ペニシリン (経口・非経口の 区別なし) | 髄膜炎、非髄膜炎の区別なし | ≦0.06μg/mL | 0.125~1μg/mL | ≧2μg/mL |
表2 2008年に改訂された抗菌薬感受性による肺炎球菌の分類
抗菌薬 | 適応 | 高感受性(S) | 中等度耐性(I) | 高度耐性(R) |
---|---|---|---|---|
ペニシリン 【経口】 | 髄膜炎、非髄膜炎 の区別なし | ≦0.06μg/mL | 0.125~1μg/mL | ≧2μg/mL |
ペニシリン 【非経口】 | 髄膜炎でない場合 | ≦2μg/mL | 4μg/mL | ≧8μg/mL |
髄膜炎の場合 | ≦0.06μg/mL | / | ≧0.12μg/mL | |
アモキシシリン | 髄膜炎でない場合 | ≦2μg/mL | 4μg/mL | ≧8μg/mL |
セフォタキシム または セフトリアキソン |
髄膜炎でない場合 | ≦1μg/mL | 2μg/mL | ≧4μg/mL |
髄膜炎の場合 | ≦0.5μg/mL | 1μg/mL | ≧2μg/mL |
肺炎球菌は、ペニシリンのMICの違いによりペニシリン高感受性(PSSP)、中等度耐性(PISP)、高度耐性(PRSP)の3つに分類される(表1)。
しかしながら、この分類は髄膜炎には有用だが肺炎には必ずしも当てはまらず、2008年にCLSI(米国臨床検査標準委員会)により判定基準が改訂された。経口と非経口に分けて判断基準が設けられ、さらに非経口は、髄膜炎とそれ以外(肺炎等)に分けられた(表2)。経口薬においては従来と同様であるが、非髄膜炎疾患に対して注射薬を用いた場合には十分に高い病巣内の抗菌薬濃度が得られるため、従来はPISPもしくはPRSPと判定されてきた大部分の菌株がPSSPの範疇に入るようになった。
参考文献:
Mandell GL,et al:Mandell,Dougls,and Bennett’s Principles and Practice of Infectious Diseases,7th ed.pp2633-2634,Churchill Livingstone,2010
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研修医クルズス: PRSP(ペニシリン耐性肺炎球菌)について
肺炎球菌は市中肺炎の中で最も多い起炎菌ですので、ポイントとなる知識を整理しておきましょう。肺炎球菌に対しては、ペニシリンGが効くことが多いのですが、ペニシリンG耐性の株もあります。それを
ペニシリン耐性肺炎球菌=PRSPといいますね。
しかしポイントは、ひとことで『PRSP』と言っても、全てがペニシリン耐性ではない、ということです。2008年までの基準では、MICが0.125μg/ml以上であれば全て耐性(R)と表現しており、この記載法は現在でも(多くの検査室で)継続されています。
しかし、それ以降に出たガイドラインでは、実際の点滴ペニシリンGの場合は、2μg/mlまでは感受性(S)、4μg/mlであれば中等度耐性(I)、6μg/ml以上であれば耐性(R)という基準に変わりました。
つまり、実際の臨床において、画面でPRSPと標記されても、MICが、『0.125』、『0.5』、『1.0』、『2.0』の場合は耐性どころかペニシリンGに感受性があると考えて良いのです。当科の過去の症例も、PRSPの多くが『2.0』以下でした。
重症の肺炎球菌性肺炎に対しては、当初PRSPをカバーするために、広域抗菌薬で治療を開始することが多いですが、その後、PRSPという結果が出た場合も、安易に広域薬を継続せず、MICの値を見つつDe-escalation可否を判断するべきと考えます。