(日本版敗血症診療ガイドライン2012をさらに簡潔にまとめつつ、一部補足も行いました)
1.敗血症の定義と診断
敗血症の定義
敗血症=sepsisは感染によって発症した全身性炎症反応症候群(SIRS)とする。
SIRSの定義は以下の4項目のうち2項目以上が該当する場合とする。
- 体温>38℃または<36℃
- 心拍数>90回/分
- 呼吸数>20回/分またはPaCO2<32Torr
- 末梢血白血球数>12,000mm3または<4,000mm3,
敗血症の重症度分類
敗血症の重症度分類として、重症敗血症、敗血症性ショックを用いる。
重症敗血症とは敗血症の中で、臓器障害や臓器灌流低下(乳酸アシドーシス,乏尿,意識混濁)または低血圧を呈する状態。
敗血症性ショックとは重症敗血症のなかで,十分な輸液負荷を行っても低血圧(収縮期血圧<90mmHgまたは通常よりも>40mmHgの低下)が持続するものとする。ただし、循環作動薬が投与されている場合は、低血圧でなくてもよい。
敗血症に有効なバイオマーカーとは?
CRP,IL-6,プロカルシトニンがある程度有用であるが,現時点では敗血症を確実に診断できるバイオマーカーはない。
2.感染症の診断
培養検体の採取は何を、どのタイミングで行うか?
重症敗血症/敗血症性ショックでは菌血症を合併している可能性が高いため、すべての症例において,抗菌薬投与開始前に血液培養を行う。ただし、治療開始が遅れることのないよう。
同時に,推定感染原因部位からの検体を無菌的に採取し,塗末検査と培養同定・感受性検査を行う。
髄膜炎→頭蓋内圧亢進症状のないことを確認した後,髄液採取。
肺炎→気管支鏡下あるいは盲目的に気管支肺胞洗浄液を採取し、定量培養を考慮する。
中心静脈カテーテル関連血流感染症→血液培養のうち1セットはカテーテルから採取し,カテーテルを抜去して先端を定量的培養検査に提出する
血液培養の正しい取り方は?
穿刺部の皮膚を,アルコール含有クロルヘキシジン(ヒビテンなど),アルコール含有10%ポビドンヨード(イソジン液など)あるいはアルコール前清拭後水溶性10%ポビドンヨードで消毒する。
血管経皮穿刺により,1セットあたり20mlを2セット以上(感染性心内膜炎を疑う場合には3セット)採取する。
経験的抗菌薬投与のタイミングは?
診断後,1時間以内に経験的抗菌薬投与を開始する。
感染症、原因菌の経験的治療薬は?
経験的治療では、原因感染症を推定し、その感染症で疫学的に頻度の高い原因菌を十分カバーできる広域抗菌薬の投与を行う。
(表1「表1.疑わしい感染症別の経験的治療薬」を参照)
3.標的治療薬は?
原因菌が確定したら,感受性結果を評価し,表2を参考に,抗菌薬を標的治療薬に変更する。
標的治療薬は,単剤を基本とする。
黄色ブドウ球菌やカンジダ属が血液培養から検出された場合には,感染症専門医へのコンサルトが望ましい。
(つづく)
◇◆◇
Written By S.Fujimaki