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熱傷の局所治療

創面の清浄化、疼痛対策

異物などで創面が汚染されている場合は異物を除去し洗浄する。単なる熱湯による熱傷では、必ずしも洗浄の必要はないとされる。化学熱傷の場合は創面を十分に洗浄する。創面の「消毒」は、組織傷害を来たす可能性があり行わないほうがよいという意見が多い。

受傷直後の疼痛対策として冷却が有効であるが、いつまで冷却するべきか?については、「長くても30分くらい」、というのが大方の見解である。それ以降は、創面を乾燥させないことが重要である。創面の乾燥を防ぐためには、軟膏が最も重要で、白色ワセリン(プロペト軟膏)が好んで用いられている(注1)

抗菌薬含有軟膏(ゲンタシン軟膏など)は菌交代の危険性がありあまり推奨されていない。抗炎症作用をもつステロイド軟膏(リンデロンなど)は、副作用の点から長期使用に適さず、顔面や乳幼児など繊細な治療にも不適である。弱い抗炎症作用をもつ非ステロイド軟膏(アズノール軟膏など(注2))は、この使用を否定する根拠に乏しい。

水泡膜や水泡液を残すか、あるいは除去するか、については諸説あり結論が難しい。水泡膜も水泡液も、皮膚のバリア機能を維持する可能性が示唆されている一方で、感染源となる危険性も指摘されている。すでに水泡が大きく破れ、下床が露出しているような水泡膜は、バリア機能を有しないため、異物として除去するべきであろう。

具体的な創面被覆方法

いくつもの方法が実践されているが、代表として以下に挙げる。

  1. 軟膏を練り込んだシリコンガーゼで創面を覆い、ガーゼで保護する。連日同じ処置を繰り返し、上皮化を待つ。水泡膜や水泡液を感染源と考える場合は、これを除去する。
  2. 軟膏を塗布したラップ材(穴あきサランラップ、プラスモイストなど)で創面を覆い、ラップの場合はガーゼで保護する。①同様に連日処置し、適宜水泡膜や水泡液の除去を行う。
  3. 創面を軟膏で覆い、テガダームなどのシール材を直接貼付し、上皮化するまで剥がさない(完全クローズ)。水泡膜は除去しない。水泡液を除去する際は、シールの外から穿刺排液し、外側にシール材を重ねて貼付する。

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(注1) アズノール軟膏は植物由来の非ステロイド剤。カミツレという植物に含まれるアズレンという成分が含まれており、抗炎症作用があるため、熱傷やアレルギー性皮膚炎などの際に皮膚の保護効果(保湿)や抗アレルギー作用を期待して使用される。ステロイド軟膏のような強烈な抗炎症効果はないが、副作用が少なく長期間の使用や顔などのデリケートな部位の炎症に問題なく使用出来る。乳幼児のオムツかぶれやあせもや湿疹などの症状に使用される。

(注2) プロペト軟膏(主成分白色ワセリン)は、皮膚の乾燥、かぶれ、湿疹、アトピー性皮膚炎などに使用される、石油から分離・精製して作られた軟膏である。他の動物性や植物性油に比べて酸化されにくいため、保存しやすいという利点がある。刺激性がないため副作用が非常に少ない、また、高温滅菌ができるので清潔であるという特徴をもつ。これらの要件を満たすため、デリケートな対象、たとえば乳幼児の皮膚や、眼軟膏の基材としても好んで用いられる。

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参考資料
  1. ドクター夏井の外傷治療 裏マニュアル
  2. 熱傷の水疱は水疱膜を除去した方がよいのか? 内容液を抜いた方がよいのか?
    中村猛彦 熊本赤十字病院皮膚科部
公開日: カテゴリ: ポケットガイド, 熱傷
  • ポケットガイド:カテゴリー

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