一酸化炭素中毒に対する高気圧酸素療法(HBO)の目的は、
①急性期の虚血症状を改善すること、 ②慢性期の精神神経後遺症を軽減させること、の2つ。
急性期の虚血症状の指標としては、もちろんCO-Hbが高値であることが含まれるが、心電図異常や、臨床症状としての意識障害、嘔気嘔吐、視界がぼやける、なども虚血症状として重要。
常圧の100%酸素投与下ではCOの半減期は約90分だが、HBOを行えば約30分に短縮する。溶存酸素もHBOにより0.3ml/dl(常気圧)から0.6ml/dlに増加するとされ、これによる虚血症状の改善が期待される。
HBOの有効性が示唆された重要な臨床研究1)では、来院後24時間以内に約2時間3アトムのHBOが施行され、次の24時間以内にあと2回、約2時間2アトムのHBOが施行されました。スケジュールがかなりタイト。結果、その2週間後と6週間後の神経精神症状が対象群と比べて有意に改善したとのこと。
しかしHBOの効果を否定するRCTも報告されており、現在のところCO中毒に対するHBOの適応として明確なものはない。比較的グローバルに受け入れられていそうなクライテリアは、別項(COに暴露した患者さんの治療フローチャート)に示したとおり。
ただしCO暴露から12時間以上経過したあとでHBO療法を開始した場合の有益性は今のところ曖昧になっているので、できれば12時間以内に開始するのがよさそう。我々は、遅発性の後遺症と闘う患者さんを多く経験しているが、患者さんたちがもっと早期に来院して、そして曝露12時間以内にHBOを受けていたら結果は違ったのかな?と考えることもある。もしかしたらHBO療法は、低体温療法のようにできる限り早期に実施することに意義があるのかもしれない。
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参考文献
- 1)Hyperbaric Oxygen For Acute Carbon Monoxide Poisoning, Lindell K. 2002, NEJM
- 2)Up To Date