(日本版敗血症診療ガイドライン2012をさらに簡潔にまとめつつ、補足も行いました)
考えやすい原因 | 想定される原因菌 | 推奨薬 | 注意事項 |
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市中肺炎 | ●緑膿菌リスク無し 肺炎球菌,インフルエンザ桿菌,レジオネラ,マイコプラズマ |
●緑膿菌リスク無し CTRX:セフトリアキソン(CTX:セフォタキシム) またはSBT/ABPC:スルバクタム/アンピシリン +AZM:アジスロマイシン |
◆過去3カ月以内の抗菌薬使用歴のある患者,過去3カ月以内に2日以上の入院歴のある患者,および維持透析患者は医療行為関連肺炎として治療 ◆市中型MRSAの可能性があればVCM+CLDM:バンコマイシン+クリンダマイシンまたはLZD:リネゾリドを併用 |
●緑膿菌リスク有り 上記に加えて,緑膿菌等の病院型グラム陰性桿菌 |
●緑膿菌リスク有り CFPM:セフェピム,TAZ/PIPC:タゾバクタム/ピペラシリン,MEPM:メロペネム(DRPM:ドリペネム, IPM/CS:イミペネム/シラスタチン) +AZM:アジスロマイシン |
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人工呼吸器関連肺炎, 院内肺炎, 医療行為関連肺炎 |
●緑膿菌リスク無し 肺炎球菌,インフルエンザ桿菌,MSSA,感受性のある大腸菌や肺炎桿菌 |
●緑膿菌リスク無し CTRX:セフトリアキソン(CTX:セフォタキシム)またはSBT/ABPC:スルバクタム/アンピシリン |
◆抗MRSA薬の併用は,原因菌としてMRSAの可能性が高いと判断された場合に。 ◆アミノグリコシドの併用には議論もあり。特にバンコマイシンとの併用下における腎障害の可能性に注意 |
●緑膿菌リスク有り 上記に加えて,緑膿菌を含む病院型のグラム陰性桿菌,MRSA |
●緑膿菌リスク有り CFPM:セフェピム, TAZ/PIPC:タゾバクタム/ピペラシリン,MEPM:メロペネム(DRPM:ドリペネム, IPM/CS:イミペネム/シラスタチン) 以下の併用を考慮 ±VCM:バンコマイシンまたはLZD:リネゾリド ±AMK:アミカシン |
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市中尿路感染症 | 主に大腸菌 | ABPC:アンピシリン+GM:ゲンタマイシン または CTRX:セフトリアキソン(CTX:セフォタキシム) |
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カテーテルや 医療行為関連尿路感染症 |
大腸菌,緑膿菌,腸球菌 | TAZ/PIPC:タゾバクタム/ピペラシリン, MEPM:メロペネム(DRPM:ドリペネム, IPM/CS:イミペネム/シラスタチン) またはCPFX:シプロフロキサシン ± GM:ゲンタマイシン またはAMK:アミカシン |
緑膿菌を含むグラム陰性桿菌および腸球菌のカバーを外すべきではない |
カテーテルや 医療行為関連血流感染症 |
表皮ブドウ球菌,黄色ブドウ球菌(MRSAも含む),緑膿菌を含む病院型のグラム陰性桿菌 | VCM:バンコマイシン + CFPM:セフェピム,TAZ/PIPC:タゾバクタム/ピペラシリン, MEPM:メロペネム(DRPM:ドリペネム, IPM/CS:イミペネム/シラスタチン) ± GM:ゲンタマイシンまたはAMK:アミカシン ± FLCZ:フルコナゾールまたはMCFG:ミカファンギン |
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市中発症腹腔内感染症 | バクテロイデス等の嫌気性菌,大腸菌等の感受性のグラム陰性桿菌 | ABPC/SBT:アンピシリン/スルバクタム | 緑膿菌リスクがある場合、TAZ/PIPC:タゾバクタム/ピペラシリンを考慮 |
院内発症腹腔内感染症 | 上記に加えて,緑膿菌等の病院型グラム陰性桿菌 | TAZ/PIPC:タゾバクタム/ピペラシリン, MEPM:メロペネム(DRPM:ドリペネム, IPM/CS:イミペネム/シラスタチン) ± VCM:バンコマイシン ± FLCZ:フルコナゾールまたはMCFG:ミカファンギン |
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複雑性皮膚軟部組織感染症 | ●市中発症で下記のリスク無し レンサ球菌,MSSA,クロストリジウム |
●市中発症で下記のリスク無し PCG:ベンジルペニシリン+CLDM:クリンダマイシン |
◆市中型MRSAが臨床的,疫学的に想定される場合LZD:リネゾリド併用 |
●海水・淡水への暴露 Aeromonashydrophila, Vibrio vulnificus |
●海水・淡水への暴露 MEPM:メロペネム(DRPM:ドリペネム, IPM/CS:イミペネム/シラスタチン) + CPFX:シプロフロキサシン |
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●糖尿病壊疽,虚血肢,医療行為関連 黄色ブドウ球菌,緑膿菌等の病院型グラム陰性桿菌 |
●糖尿病壊疽,虚血肢,医療行為関連 TAZ/PIPC:タゾバクタム/ピペラシリン, MEPM:メロペネム(DRPM:ドリペネム, IPM/CS:イミペネム/シラスタチン) ± LZD:リネゾリド |
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市中発症髄膜炎 | 肺炎球菌,髄膜炎菌 | 高用量CTRX:セフトリアキソン(2g 12時間毎)(高用量CTX:セフォタキシム2g4時間毎) + 高用量VCM:バンコマイシン(20mg/kg12時間毎) + アシクロビル |
◆50歳以上,免疫不全,アルコール依存のある場合,Listeria monocytogenesを考慮し高用量ABPC:アンピシリン(2g 4時間毎)を併用 ◆抗菌薬開始前にデキサメタゾン0.15mg/kg静注(2~4日間継続) |
脳神経外科術後髄膜炎 | MRSAを含む黄色ブドウ球菌,緑膿菌を含む病院型グラム陰性桿菌 | 高用量VCM:バンコマイシン(20mg/kg12時間毎) + 高用量CFPM:セフェピム(2g 8時間毎)または高用量MEPM:メロペネム(2g 8時間毎) |
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発熱性好中球減少症 | 緑膿菌を含む病院型グラム陰性桿菌,MRSAを含む黄色ブドウ球菌 | CFPM:セフェピム,TAZ/PIPC:タゾバクタム/ピペラシリン, MEPM:メロペネム(DRPM:ドリペネム, IPM/CS:イミペネム/シラスタチン) + VCM:バンコマイシン ± AMK:アミカシン |
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市中発症でフォーカスが不明 | 肺炎球菌,髄膜炎菌および大腸菌等の感受性グラム陰性桿菌 | ●細菌性髄膜炎が否定できない 高用量CTRX:セフトリアキソン(2g 12時間毎)(高用量CTX:セフォタキシム2g4時間毎) + 高用量VCM:バンコマイシン(20mg/kg12時間毎) + アシクロビル + GM:ゲンタマイシン(7mg/kg 1回のみ) |
◆感染症専門医コンサルト ◆50歳以上,免疫不全,アルコール依存のある場合で細菌性髄膜炎が否定できない場合,Listeria monocytogenesを考慮し高用量ABPC:アンピシリン(2g 4時間毎)を併用 |
●細菌性髄膜炎は否定的 CTRX:セフトリアキソン(CTX:セフォタキシム)+GM:ゲンタマイシン(7mg/kg 1回のみ) |
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院内発症(または医療行為関連)でフォーカスが不明 | 緑膿菌等の病院型グラム陰性桿菌,MRSAを含む黄色ブドウ球菌 | CFPM:セフェピム,TAZ/PIPC:タゾバクタム/ピペラシリン, MEPM:メロペネム(DRPM:ドリペネム, IPM/CS:イミペネム/シラスタチン) + VCM:バンコマイシン ± AMK:アミカシン |
◆ 感染症専門医コンサルト |
※一般名・商品名一覧(略語アルファベット順)
- AMK:アミカシン(=硫酸アミカシン)
- AZM:アジスロマイシン(=ジスロマック)
- CFPM:セフェピム(=マキシピーム)
- CLDM:クリンダマイシン(=ダラシンS)
- CPFM:シプロフロキサシン(=シプロキサン)
- CTRX:セフトリアキソン(=ロセフィン)
- CTX:セフォタキシム(=クラフォラン、セフォタックス)
- DRPM:ドリペネム(=フィニバックス)
- FLCZ:フルコナゾール(=ジフルカンカプセル)
- GM:ゲンタマイシン(=ゲンタシン)
- IPM/CS:イミペネム/シラスタチン(=チエナム)
- LZM:リネゾリド(=ザイボックス)
- MCFG:ミカファンギン(=ファンガード)
- MEPM:メロペネム(=メロペン)
- PCG:ベンジルペニシリン(=ペニシリンGカリウム)
- SBT/ABPC:スルバクタム/アンピシリン(=ユナシンーS)
- TAZ/PIPC:タゾバクタム/ピペラシリン(=タゾシン)
- VCM:バンコマイシン(=塩酸バンコマイシン)