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薬物中毒の治療1:胃洗浄

目的

胃内に存在する毒薬物の除去

適応

大量の毒性物質が胃内に存在していると推定できる場合が適応です。ただし毒性物質の経口摂取後1時間以内に施行するのが望ましく、それ以降は除去量が減少し、かつ誤嚥性肺炎などの合併症リスクが胃洗浄の効果を上回るとされます。我々の施設でも原則として服薬後1時間以上経過した症例は胃洗浄を行わず活性炭の内服のみ行なうケースが多いです。ただし意識障害などにより気管挿管(気道確保)が行なわれている症例では誤嚥のリスクが軽減され、喉頭けいれんによる低酸素血症の危険性も回避されているため、1時間以上経過しても胃洗浄を行なうこともあります。また胃腸蠕動を低下させやすい薬物(三環系抗うつ薬、フェノチアジン系薬物、アトロピンなど)や、パラコートなどの胃粘膜付着性の高い薬物の服用が疑われる場合は、その除去効率を考慮して1時間以上経過しても胃洗浄を実施する場合があります。

禁忌

石油製品・有機溶媒は化学性肺炎を惹起するため原則禁忌。ただし胃洗浄を試行するべき他の薬物の同時服用が考えられる場合は気管挿管下に施行します。強酸や強アルカリ製剤は粘膜の腐食作用が強く、食道や胃の化学損傷のリスクがあるため、胃管挿入による消化管穿孔の可能性を考慮し、まず内視鏡による粘膜の評価が必要です。また、食道静脈瘤を有する場合は食道粘膜損傷による出血のリスクがあり相対的禁忌。胃管挿入前に食道静脈瘤の有無を可能な限りチェックしましょう(病歴や画像診断)。

準備物品

胃管(食物残渣が通過できるよう内腔が太いもの、成人;34~36Fr(少なくとも20~30Fr)、乳幼児;16~28Frの先端が丸く腰のある胃管、側孔が多数開いたもの)、ゼリー、洗浄用注射器、バケツなど。施設によっては漏斗、Y字管、連結チューブ、クランプ鉗子などを用いて効率的に行なっていますが、なければ適宜工夫しましょう。

手技と方法

  1. 患者やその家族に胃洗浄の必要性を説明し、同意と協力を得る。
  2. 胃管を挿入し位置を確認する。この際胃内容の流出か、送気音を聴診器で確認する。さらに、意識障害のある症例ではX線撮影にて気管支への迷入のないことを確認する(咳嗽反射が低下していると迷入に気づかないことがある)。また、側孔がすべて確実に胃内に入っていなければ洗浄水の食道逆流の危険があるため、X線写真上の側孔の位置を厳密に確認する(チューブを体表に当てあらかじめ挿入する長さを測定する)。
  3. 体位;左側臥位・頭低位(約15度)・下肢は屈曲し腹壁の緊張をとる。胃幽門側を高位とし十二指腸への流出を防止する。
  4. 洗浄液の注入と排液;まず出来る限り胃内容物を流出させ、愛護的に吸引する。続いて洗浄用注射器により洗浄液を注入するか、漏斗付洗浄器により自然注入する。排液は自然排液か、注射器による陰圧吸引により行なう。
  5. 注入量と速度;微温湯または生理食塩水を一回200~250ml程度注入し、排液を繰り返す。排液が無色無臭、混濁物がなくなるまで繰り返し行なう。
  6. 体位変換その他;排液が透明になった時点で腹壁を左右にゆすったり体位を仰臥位に変え、胃体部・幽門部などの洗浄を行なう。さらに排液が透明、無臭となるまで洗浄する。全工程において最低でも1Lは洗浄する。排液量をおおまかにチェックし水分出納を確認しておく。活性炭(成人:50~100g、小児25~50g)と緩下剤を注入し、胃管を抜去する。

合併症

胃管挿入時の機械的損傷、胃管の誤挿入、胃管の刺激による喉頭けいれん、洗浄刺激による副交感神経反射(低血圧、徐脈、不整脈)、大量の洗浄液使用に伴う電解質異常や低体温などが合併症として考えられます。したがって、心電図モニター、血圧計、体温測定、パルスオキシメーターなどの基本的バイタルサインのチェックが必要です。

留意点

意識障害、判断能力欠如、治療拒否、あるいは代諾者のいない状況でも、必要と判断されれば診療録に記載して胃洗浄を実施します。

公開日:2013年3月1日  カテゴリ: ポケットガイド, 中毒・毒物
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