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第24回 新型コロナウイルス 感染防御の基本的な考え方について

第24回 新型コロナウイルス 感染防御の基本的な考え方について

コロナの第二波が迫っている。

私は、自身が司会をしている「COVID-19対応地域連携Web会議」などで、
有識者の先生方や、現場で活躍しているすべての医療者から「最新の知見」を得ている。

その内容をまとめたいと思う。

まず本稿で、「感染制御の基本」についてまとめ、
次回(ブログ25回)は、「地域全体で取り組むコロナ医療」についてまとめる。

感染防御の基本について

新型コロナウイルスの感染経路は、飛沫感染と接触感染である。
空気感染はほぼ起きないとされている。

それは何を意味するか。

つまり、しっかりやれば、「ほぼ確実に」感染を防ぐことができる、ということである。 

飛沫感染は、お互いがマスクをかけること、
及び、適切な距離を取ること、によりほぼ確実に防ぐことができる。
(気管挿管など特殊な手技などエアロゾル発生下では、N95マスクなどが推奨される)

接触感染は、全ての接触物(ドアノブ、つり革、自動販売機など)から感染する。
新型コロナウイルスは結局、最後は、それを触った「手指」を介して、
ウイルスが口、鼻、目に進入するので、 ウイルスの侵入を防ぐためには、
要するに、「手指消毒」を徹底すればよいのである。

意外と認識されていないが、
新型コロナウイルスの進入門戸は、あくまで、口、鼻、目であり、
「皮膚」からの感染はこれまで確認されていない。

したがって、適切なタイミングで手指消毒さえしていれば、
ドアノブ、つり革、自動販売機がいかに汚染されても、感染しない。

逆に、「今、わたしの手は汚れている」と「自認」している場合は、
とにかく口、鼻、目を、触らないようにする。
手指消毒とは、流水での手洗い、あるいはアルコールによる殺菌である。

これら、飛沫感染予防(=マスク)と、
接触感染予防(=手指消毒)が「しっかり」できていれば、
ほぼ「確実」に感染を防ぐことができるのである。

病院や高齢者施設における「感染対策」は、
全てこの基本原則に立ち返ることで、完遂できるのである。

もちろん、実際は「100%」ということはない。
100%「近く」防ぐことができるのである。

そのうえで、
この100%の包囲網から逃れた「残り」の新型コロナウイルスに、
我々はどう対応すれば良いだろうか。

そこには、災害対応に準じた、地域全体の強固な「連携」が必要になる。
これについても次回まとめさせて頂く。

100%の牙城が崩れるとき①(無症候者からの感染)

では、どういうときに100%の包囲網の隙をついて、
新型コロナウイルスが他者へ感染するのか。

第一の理由は、やはり「無症状の感染者」の存在であろう。
いわゆる「一般」の患者さん、つまり癌や心筋梗塞、脳卒中、精神疾患などなど、
あらゆる病気で入院している患者さんの中に「無症状の感染者」がいる。

介護施設にも、ふつうに入所されている利用者さんに「無症状の感染者」がいる。
我々は、「無症状の感染者」に対する防御が「ゆるい」のである。

そこが我々の「弱点」なのである。

したがって、「無症状の感染者」からうつらないようにすることが最も重要である。
具体的には、一般社会と同じ「3密の回避」。
病院や介護施設では、これに加えて飛沫・接触感染の予防(上記)を徹底的に行うことになる。

 

無症状者へのPCR検査については、さまざまな意見があるが、
たとえ結果が「陰性」だったとしても、
ついさっきまで感染していなかったが1分後に感染する可能性もある。

また、PCR検査の精度としての「偽陰性」の問題も指摘されている。

また、感染していない人を、
誤って「感染している」としてしまう可能性(偽陽性)もある。

その確率が0.1%だとしても、感染していない市民10万人にPCR検査をすると、
100人もの「偽陽性者」がでて、この人たちを誤って隔離してしまうことにつながる。

これらの理由から、無症候者へのPCR検査適応については、
メリットと同時に、そのデメリットも勘案しつつ、適応の有無を判断しなければならない。

それより以前に、
自分も、そして「あなた」も、皆、感染しているかもしれない、
と自覚して行動することが大事である。

幸い、新型コロナウイルスは、空気感染しないので、
その「自覚」次第では、感染を「ほぼ確実に」防ぐことができるはずである。

どの程度「自覚」すれば良いのか?

新型コロナウイルスは「空気感染」しない。
すなわち、飛沫を浴びる、あるいは触ったところを触る以外では、感染しない。

病院職員や施設職員は、このことを徹底的に「自覚」して、
全ての入院患者、および施設利用者に対応すればよいと思う。

日常の業務に照らしてイメージするなら、
これは「ノロウイルス」対応と同じである。

医療従事者や介護職員は、
これまでも「ノロウイルス対策」なら、完璧にやってきたはずである。
そのコンセプトを「拡大」すること、
つまり周囲の「全員」に対して、「ノロ対応」するのである。

すなわち、皆がノロを持っている。というイメージで、
皆が新型コロナを持っている、という「認識」を徹底し、
具体的には、「マスクと手指衛生」を徹底するのみである。

ガウン・エプロンは、もちろんあれば良い。
しかしウイルスは口、鼻、目から侵入することを考えると、ガウンがなくても、
まずは「マスクと手指消毒」による防御が鉄則だと思う。
(たとえガウンをしていても首回りなどは、防御が脆弱である)。

100%の牙城が崩れるとき②(脱衣時の感染)

もちろん、ガウン・エプロンはあったほうが良いが、
それを脱ぐ際に、その「外側」を触ってしまうことで、肝心の「手指」が汚染される。

これは、マスクも同じである。
マスクの「外側」を触ることによって、手指が汚染される。
その手指で、口、鼻、目を触る。それによって、感染が起こる。

これら「感染防護衣」は、我々を「守って」くれるように見えて、
実は、最後のところで、我々の大きな「脅威」になっているのである。
100%の牙城が崩れるとしたら、その一つは「脱衣時」の感染であろう。

従って、「感染防護衣の脱衣」においては、
その一つ一つの行動に「手指消毒」を伴わせる必要がある。

グローブを外す →  手指消毒
ガウンを脱ぐ  →  手指消毒
帽子を脱ぐ   →  手指消毒
マスクをとる  →  手指消毒

いずれにせよ、我々が立ち返る「原則」は同じであり、最後の砦は「手指消毒」なのである。

「感染疑い」患者さんの対応

どの病院にも、どの高齢者施設にも、「無症状の感染者」は必ずいる。
たまたま今日はいなくても、必ず「無症状の感染者」はやってくる。

従って、「全員が感染者」だと考えて、
上記の「予防策」に努めることが大事である。

しかし、その牙城が突破され、院内感染や施設内感染が起こったときにどうするか。
その際は、いち早く有症状者を発見して、
有症状者と無症状者を「違う」スペースに移動させる。

これも普段の「ノロ対応」と同じである。

先に説明したように、PCR検査では「白黒つける」ことが困難である。
偽陰性は報告によって約3割~7割とされているので、
PCR検査結果を信じすぎることは、かえって感染拡大につながる危険性もある(後述)。

このように、感染の白黒をつけられない場合は、我々は、「症状」に応じて、
その対応を「決断」することになる。「決断」の原則はシンプルであり、

  • 無症状者も「感染者」と思って感染防御する。
  • 「症状」のある患者さんを別のスペースに移す。
  • 症状が悪化する患者さんを高次医療機関へ搬送する。

という「3原則」的な「決断」のみである。

実は、この考え方は、他のウイルス感染症、
例えば、インフルエンザやノロウイルスでも、全く同じであった。
これらのウイルス診断キットも、相当な割合で偽陰性や偽陽性が含まれていたのである。

例えばインフルエンザでいうと、検査「陰性」患者の多くに感染者がいた。
検査「陽性」患者の多くに非感染者がいた。
にもかかわらず、我々は「検査結果」に頼り過ぎていた。

つまり、本当はインフルエンザ感染症だった患者さんに
「あなたは検査陰性だからインフルエンザではない」と誤った説明してきたのである。
(もちろん、どの医師もそうとは限らないが、全体に検査過信の傾向はあったと思う)。

地域がコロナに負けてしまわないために

このような「検査結果」重視の、我々の偏った診察スタイルは、
インフルエンザであれば、「大惨事」にならなかったのかもしれないが、
新型コロナウイルスに対しては、大きな問題になるだろう。

例えば、「検査陰性=感染者ではない」、と決めつけてはいけない。
ましてや「検査陰性なので感染防御をしなくてよい」としてもいけない。

このような感染防御の「ゆるみ」が、
病院や介護施設での「内部感染」を惹起し、ひいては、
多くの施設の「閉鎖」や「機能不全」をもたらすことになるだろう。

すなわち、PCR結果に関わらず、全ての患者・利用者に「感染」を疑うこと、が重要である。

いま、全ての病院や介護施設にとって、もう逃げ場がないところまで、
新型コロナウイルス感染症が到来している。

ここで「逃げ腰」になってしまうと、すぐそばの感染症に、気づくことすらできないまま、
あっという間に、機能不全に陥ってしまう。

ポイントは、必ずやってくる「無症状の感染者」に対して適切に対応できるかどうかである。

このような「共通認識」を徹底することにより、
病院・介護施設の対応レベルが「底上げ」されたら、
新型コロナウイルス感染に対する地域の診療成績は、大幅に改善されると思う。

それでも網をかいくぐる感染に対しては、
我々が日頃から培ってきた「連携」の力を、最大限駆使しながら、
地域全体で戦ってゆくことになるのだと思う。

 

公開日: カテゴリ: 新井隆男のブログ

プロフィール

救命救急センター長 新井隆男

東京医科大学八王子医療センター
救命救急センター長 新井隆男

◎所属学会 認定資格
日本救急医学会指導医
日本救急医学会関東地方会
日本臨床救急医学会
日本外科学会
日本腹部救急医学会
日本感染症学会
日本熱傷学会
日本プライマリ・ケア学会

◎これまでの社会活動
東京DMATインストラクター
東京都地域災害医療コーディネーター